桃太郎６

　次の日、おばあさんは河に洗濯に出かけました。



　おばあさんの胸中はずっと犬を急につれて帰ってきたことに始まった昨晩の大喧嘩が、背中何度も人肌の温度の生ぬるいナイフでぷすりぷすりと刺されるような痛々しくも気色悪い感じ、痛い？、いやなんかでも止めて欲しい、ようなうっとうしさがどうも抜けきれず、その表情は１０歳は老けて見え、まぁ、老けて見えても所詮ばばぁで良かったものの、川で洗濯をしていたのが幸い、川に反射する太陽光でなんとか紛らわすことができ、向こう岸で洗濯する洗濯仲間とまでは行かないまでも、「今日はあついね」など川をはさんで大きな声で会話できる発声練習のような会話をする相手が来て、その向こう婆に、「今日は顔色いいやん」と言われてほっ、「そうか？ほな、洗濯しよか」と意気揚々、行動と言語のおうむ返しのような返事をし、洗濯をし始めました。

　天気のいい日の日中はほぼ洗濯。毎日こう洗濯するものが溜まるわけでもないけど、洗濯もんが溜まらいでも向こう婆もおるし、なんぞ洗うもんなかっても、皿持ってきたり家のいろんなもん持ってきてここで服と一緒に水にさらして、あることないこと向こうとしゃべっとった方がええわ。陰気な家誰もおらんとこにおるよりまし、ここおるほうがえぇわ絶対。ここおるほうが。。。ここほれわんわんってなんやったっけ？あぁもう。犬おるん思い出したわ。もううっとうし。えさはどういうスパンで誰がやるんよもう。飼うなら飼うで飼うなりのなんかあるやろじじぃ。はぁもうなんか腹立つ。向こう婆に腹立つゆうたろかな。んなことしたら向こうどころかえらい向こうのほうまでいきそうやでやめとこ。あぁあろた。
　
　とまぁこんなことを思いながら、洗濯は終わり、いつもより向こう婆ほったらかしで洗濯に専念したせいで、いつもより早く３時のおやつてづくりしよかなぁなんて考えながら家に帰ると、じじぃがいつもより早く帰っていました。もう一回川行って向こうの婆に「多分じじぃは犬が恋しかったんやと思います」って言うたろかなぁと思いました。