忍者ブログ
なくなるまで、尽きるまでつづるブログです。 無駄な文章で無駄な時間を過ごし、ほかの時間を有効に使ってください。 カテゴリーよりジャンルを選択しお楽しみください。 妄想を書く ジャッポンのお仕事 つじつま桃太郎
[343] [342] [341] [340] [339] [338] [337] [336] [335] [334] [333]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おばぁさんと流れてきた子供の手は今まさにつながれようとしていておばぁさんはもう必死。



 犬の八に流れてきた桃のキャッチの遂行を「キャッチ!」と命令し、八も解ったのかどうなのか、とりあえずは桃のほうに向かっていったのでひとまず今から始まる数秒間はこの子の命を救う事、川から子供を、おばぁ全身全霊の力で引き上げる事が大切。まずはこの子を引き上げてしまおう。しかしこんな私の一人の力だけで子供一人川から引き上げられるだろうか心配だけど、やると決めたからには仕方ない。あぁ仕方ない。おっしゃ!やるぞここはひとつ。手ぇ握った瞬間ぎゃっとぅひきあげてぇぽい。ぎゃっとぅびぃきあげてぽい。イメージは完璧だ。あ、ちょっとだけ桃関連の不安と食欲を忘れられたぞ!この調子。今は桃より子供救助。おし。

 遂におばぁさんの手と流されてきた子供の手が交わりました。

 その交わった様は、両者共、想像していた以上にがっちりと結ばれました。というのもお互いに右手を出し合っていたわけなのですが、当然手を取り合う瞬間のイメージは、崖から落ちそうな相方のムキん坊な腕と自分のムキムキん坊な腕とが差し出され、がっちりと手を握る。あわよくば握った手を持ち帰る、「ファイト!」という掛け声に「一発!」というイメージでした。
 その両者のイメージの一致はすさまじく、おばぁさんは眉間にしわを蓄え釣り目になって「おっしゃぁ!」そして、流れきた子供も川から引き上げてくれる人間が老人女性なのにその距離10mあたりまでは不安でしたが、彼女から今放たれた「おっしゃぁ!」の声量と腕の血管を見て、そんな不安は既になくなっていてようやく「いっぱーつ!」とこの場合「おっしゃぁ」に対し不成立な相槌になってはしまいましたが、引き上げられる気合は充分。
 
 お互いの手と手は互いの手首と手首をつかみ合う引き上げる為のベストポジションをキープしました。お互いの手首の脈と脈が力強く同じリズムを刻んでいました。遂におばぁさんは子供を助けました。



 おばぁさんがほっとしているのも束の間、しばらくして子犬の八が川から桃を上手にキャッチしていることを確認しました。おばぁさんがその光景を見てなによりも一番驚いたのは子犬の八が川からキャッチした桃を甘噛みしていることでした。なんて利口な犬なのでしょう。子犬の甘噛みのおかげで見事に桃の状態はデッドストック。おいしそうなその容姿はそのまま健在でした。

「あぁ、これでようやく落ち着いて桃を食べられるわい。わーい。よし。じゃあこっちへおいで八。」

 ばぁさんはそれに続いて重ねて言いました。

「八。私が八にこっちへ来て欲しいときは大体において『おいでー』ということのほうが多いけど、私はおまえがおじいさんの言うよう賢い子犬であることがようやく、『キャッチ』や甘噛みの結果、ようよう分かった。だからここは『おいで』なんて下流ブリーダーのような号令ではなく『クァム』という英国的な号令の方が八にはふさわしい。そしてお前の名前。『八』はヒズネームイズトッサニ『八』というだけあってあの時その場にいたお前の見た目、いい易さ。拍子は、エイトビートなテンポで咄嗟に名付けた名前だけあって今のお前にはもう相応しくないわ。
 万が一、いやこのままなら確実だけど、お前のその利口さ賢さ有名になってお前が新聞に載る。世の中でもとても有名な犬になることを今から考慮すれば、八という名前。ダサくはないよ。ダサくはないんだけどね。新聞活字文中においても読みにくいの。例えば新聞記事に「天才犬八」「頭脳犬八」などと載ったとすれば、お前の名前は「犬八(いぬぱち)」だって思われてしまうかもしれん。もちろん私の近所の人達には正式名称を知っているわけだから一部地域を除いてだけどね。
 それで肝心なのは、名付け親の私がどうなるかというと、「犬八」つまり犬の名前に「犬」という漢字を使用したナンセンスなネーミングをした飼い主だななんて思われるかもしれないし、犬の名前が日本名で号令が英国語だから余計に万が一犬八が定着・浸透しても、英国語で号令をしている私自身がが格好付けているのが露見してしまって格好悪い。それはもう恥ずかしいし、帰国子女の日本語に混ざって発せられる英単語の発音のパーフェクトさがパーフェクゥトゥなのは聞いててむかつくのは私だけじゃないしそれはまた別の話だったわソーリー。
 それにもうひとつ気になるのは『犬八』という名前はきんぱち風きんぱちっくな名前だとも言われかねない。世の中がお前が利口な犬である事よりも「犬八」というきんぱちっくな名前が先走って有名になり、お前は世間の皆様に『先生!』とか、『イヌパっつぁん』『なんですかぁ?』なんて冷やかされ兼ねないし、だいたいにおいて私はそんな意味で付けた名前でもない訳。ますますネーミングセンスの無い飼い主ってことになるので、弁解したくって名前の由来なんかをインタビューされたあかつきにだって私は「咄嗟」としか言いようが無い訳でそんな答えではインタビュアーが納得しないのよ。咄嗟というのは紛れもない事実だけどね。名前の知名度や愉快さに対して、咄嗟だなどという名付け方が釣り合わないから世の中が納得しないでしょ。わかるよね。こういうのを日本語で『名前勝ち』って言うんじゃないかしら?『名前負け』ってのは良く聞くけど。ウィンネーム。ネームウィナー。
 だから、やっぱり『八』って名前は無しね。あなたもそこいらへんにいる人間達に気安く『3年BigMe』なんて無茶振りされたら厭でしょう?ね。そうしましょ。後でね。今咄嗟にあんたに名前付ける程、私も学習能力無い人間じゃないから、後であんたの名前、おじいさんと素敵な名前考えてあげるわ。まぁ名前は英国語ってのは私の心の内で内定してるから大丈夫。かっこいい名前になるわよ。例えばエイト。エイトなんてどう?ほらぁ、日本語じゃダサいけど英国語にするだけでただの『八』も立派な『エイト』よ。騎士みたい。かっこいいじゃなーい。素敵。エイトクァム!クァムエイト!クァメイト!ほぅら私も英国訛りでかっこいい。要するにお前が私のところへ来て欲しい時は『クァム』というからそのときは私に近づいてくるのよ。クァム!」

 子犬は桃を甘噛みしたままフリーズ。動きませんでした。

 すると急に助け出した子供が「桃!」と叫んで、子犬に猛突進しました。それによって我に返った子犬はそれをすかさず切り込み、子犬は川上の方向に向かって一目散に走り出しました。
PR

コメント


コメントフォーム
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


トラックバック
この記事にトラックバックする:


忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新コメント
[08/05 ブリトニー]
[08/01 無駄事 雄三]
[08/01 三味之正味者の息子]
[07/29 三味之正味者]
[07/16 無駄事 雄三]
最新記事
プロフィール
HN:
無駄言 雄三
性別:
男性
バーコード
カウンター
アクセス解析
ブログ内検索